稲垣啓太(PR)・ルーキーイヤーは貴重な経験の連続 新人王なるか? | ラグビージャパン365

稲垣啓太(PR)・ルーキーイヤーは貴重な経験の連続 新人王なるか?

2014/01/30

文●斉藤健仁


今シーズンのトップリーグは新人の当たり年だ。ヤマハ発動機ジュビロのPR山本幸輝(近大出身)&NO8堀江恭佑(明大出身)とともに特筆すべき活躍をするPRがパナソニックワイルドナイツの稲垣啓太(関東学院大出身)だ。日本代表キャップ18を持つ川俣直樹ら先輩PRを抑えてリーグ14試合すべてに出場(うち13試合は先発)し、チームのセカンドステージ首位通過に貢献したルーキーである。

 

昨年8月、南アフリカ代表WTBのJPピーターセンが日本デビューした、NECグリーンロケッツとの練習試合のことだった。パナソニックワイルドナイツの一員として、すでに他の選手に劣らず、タックルも激しくボールキャリアとしても強い。合流間もないピーターセンよりも、鮮烈な印象を与えたのがルーキーPR稲垣啓太だった。

優勝を狙うチームでリーグ戦13試合に先発した

優勝を狙うチームでリーグ戦13試合に先発した


稲垣と言えば、2009年に日本で開催されたU20世代の世界一を決める「ジュニアワールドチャンピオンシップ」に向けたU20日本代表に、高校生(新潟工)ながら唯一選出されるなど、将来を嘱望されてきた逸材。大学は関東学院大に進学し、昨年度は主将も務めた。ただ、関東大学リーグ戦で2部から1部に降格させてしまったシーズンだったために、試合に負けて悔しそうな表情で記者会見に臨んでいる姿の方が記憶に残っている。

 

トップリーグでも通用するという手応えは夏くらいにはあった——中嶋則文監督(パナソニック)

そんな稲垣は中学校3年という、やや中途半端な時期からラグビーを始める。それまでは野球をプレーし、大きな体格(183cm、115kg)から想像される通りャッチャーだった。3兄弟の末弟で、2番目の兄が新潟県の強豪校で有名な新潟工でラグビーを始めた。その影響で、家でパスをするようになり、楕円球の虜になった。すぐに新潟ラグビースクールにも通い、高校は兄と同じ新潟工に進学したというわけだ。

運動量の多さやタックルの強さは、文句なしの、稲垣の持ち味である。ただし、大学からトップリーグとレベルが上がると、スクラムも通用するまでには、やはり時間がかかるのでは……と思っていた。パナソニックの中嶋則文監督はこう振り返った。

スクラムでは夏合宿から3番から1番に専念した

スクラムでは夏合宿から3番から1番に専念した


「稲垣がチームに入って来て、フィットネスやスピードに関しては十分に通用する選手だと思いました。本当は3番をやってもらいたかったのですが、春シーズン試したら、あまり良くなかった。だから夏合宿から1番に戻したら、やっぱりフィットした。これならばトップリーグでも通用するという手応えは夏にはありましたね」

指揮官の信頼を得た稲垣は、新人ながらトップリーグの開幕戦である近鉄ライナーズ戦でファーストジャージーを身にまとった。ファーストステージでは、スクラムに定評のあるヤマハ発動機戦こそ控えに回ったものの、残りの13試合はすべて先発。ルーキーながらパナソニックのセカンドステージ全勝、そして首位でのプレーオフ進出に貢献した。

接点やタックルでは先輩選手たちと遜色ない働きを魅せる

接点やタックルでは先輩選手たちと遜色ない働きを魅せる


「ずっと試合に出させてもらっていますが、チームの練習の厳しさがそのまま試合につながっている。大学のときと比べて、環境も一気に変わって、自分の意識も変わった。パナソニックにすごく入って良かった。自分の長所が生かせている」(稲垣)

夏時点で、中嶋監督は「スクラムはまだまだ」と言っていた。それから半年、本人も「今もまだまだですが……」と謙遜し、こう続けた。「スクラム練習中に組む相手が(日本代表キャップ24の)PR相馬(朋和)さんなんです。一回も勝てないですね。実際、何されたかわからないときもあるくらい。やっぱりこういった偉大な人と一緒に練習できるのは自分にとって貴重な経験です」

スクラム練習に関して話している最中の稲垣は満面の笑顔だった。自分の成長を実感し、日本代表やスーパーラグビーで指導経験のあるヘッドコーチの下、充実したルーキーイヤーを送っている証拠だ。

「練習時間が短いので、強度を上げたり、その中でコミュニケーションをとったりなど考えてやらないといけない。練習が楽しいというか、毎日毎日課題が明確になって、目標がはっきりしているのでやりやすいですね! 自分自身どういうプレイヤーになりたいか徐々にビジョンが見えてきました」(稲垣)

本人は「新人賞とかにはあまりこだわっていない」というが、ヤマハ発動機のNO8堀江やPR山本、サントリーのWTB塚本健太らとともに、十分にその資格があるだろう。過去、パナソニック(三洋電機時代を含む)から新人賞を受賞したのは今シーズンから副主将としてチームを牽引している元日本代表WTB北川智規と、日本人初のスーパーラグビープレイヤーとなったSH田中史朗の2人のみ。

ボールを持って前進する稲垣

ボールを持って前進する稲垣


2月1日から始まるプレーオフでも稲垣は先発、出場で1番を着けることになった。ワイルドナイツの「パナソニック」として初のトップリーグ制覇に貢献すると同時に、「パナソニック」として初の新人賞を獲得することができるだろうか。そして北川智、田中に続いて桜のジャージーへの階段を上りたいところだ。

 

斉藤健仁
スポーツライター。1975年4月27日生まれ、千葉県柏市育ち。印刷会社の営業を経て独立。サッカーやラグビー等フットボールを中心に執筆する。現在はタグラグビーを少しプレー。過去にトップリーグ2チームのWEBサイトの執筆を担当する。リーグワン、日本代表を中心に取材。

プロフィールページへ


 

記事検索

バックナンバー

メールアドレス
パスワード
ページのトップへ